ツイッター創業物語~エヴァン・ウィリアムズ、ジャック・ドーシー、ビズ・ストーン、ノア・グラスの真実~
GW中に一気に『ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り』を読みました。他社の起業家経験の疑似体験をするために、起業ストーリー系の本を定期的に読もうと思って手を付けました。かなりおもしろすぎて1日で読み終わってしまいました。
ツイッター創業物語の大枠
この本では、Twitter創業にまつわる「金と権力、友情、そして裏切り」がサブタイトルのままに書かれています。
共同創業者と言われている4人がどういう過去を持ち、どういう経緯で仲間になり、どうしてTwitter社を追い出し、追い出されるようになったのか?
各自の心境を、周囲の数百名の人へのインタビューを元にした事実として書かれています。
ここまでスタートアップの泥臭い部分を書いてくれるのか?というくらい、1つ1つのシチュエーションに対しての各自の思惑と行動が垣間見れ、自分がスタートアップをやる時の参考になるのは必至でしょう。
ツイッター創業の中心人物
Twitterは、エヴァン・ウィリアムズ、ジャック・ドーシー、ビズ・ストーン、ノア・グラスの4名が共同創業者として関わっています。まずは簡単に4名のプロフィールを紹介しましょう。
エヴァン・ウィリアムズは、Bloggerを創業しGoogleに売却した経験を持つ人物で、当時のシリコンバレー界隈でも一目を置かれていました。
ジャック・ドーシーは、当時無名のプログラマーで仕事を探している最中に、たまたまシリコンバレーの行きつけのカフェでエヴァン・ウィリアムズを見かけたことに運命を感じて、オデオに求人応募したところからジョインが始まります。
ビズ・ストーンはGoogleでエヴァン・ウィリアムズが出会った人物で、エヴァン・ウィリアムズが去ったGoogleに面白さを感じていなかったところに、エヴァン・ウィリアムズの活躍を知り転職をする形でオデオに入ります。
ノア・グラスは、元はエヴァン・ウィリアムズの隣人です。Bloggerが有名になり始めた頃何かの雑誌でエヴァン・ウィリアムズの記事を読んでいたところに、たまたま隣にエヴァン・ウィリアムズが要ることを知り仲良くなって行ったことがきっかけです。
Twitterは元はオデオというポッドキャスティング配信サービスの会社が前身で、その創業者・CEOだったのがノア・グラスでした。
オデオからTwitterになる流れ
ノア・グラスは、オデオに未来を感じながらもサービスのグロースや資金繰りに困り、度々エヴァン・ウィリアムズに出資をしてもらっていました。
エヴァンはポッドキャスティングには興味はありませんでしたが、再びシリコンバレーでサービスを当ててBloggerがたまたまの産物ではないことを知らしめたかったのです。
何度目かのエヴァンからの資金調達の時に、その条件として、CEOをノア・グラスからエヴァン・ウィリアムズにすることを提示し、ノア・グラスがそれを飲みました。
この時、未だにTwitterは出来ていなくて、この直後くらいにオデオのサイドプロジェクトとしてジャック・ドーシー、ノア・グラスが始めたのがきっかけです。
なぜCEOがコロコロ変わったのか?
TwitterのCEOはコロコロと変わりました。「ジャック・ドーシー」→「エヴァン・ウィリアムズ」→「ディック・コストロ」→「ジャック・ドーシー」の順番です。なんと3回も変わっています。ジャック・ドーシーは2回も就任しています。
ジャック・ドーシーが初代CEOになったのは、
- 開発の中心を担っていたから
- エヴァン・ウィリアムズが別プロジェクトに注意を払っていたから
という理由です。
ジャック・ドーシーがCEO、エヴァン・ウィリアムズが会長、というフォーメーションでしばらく運営していたのですが、サービスが拡大するにしたがって、CEOとしての力不足が露呈していきます。(あくまで当時のジャック・ドーシーにそこまでの力がないということで。)
例えば以下の様なことです。
- 取締役会メンバーとのコミュニケーション不足。重要な意思決定を勝手に行ってしまっていて、しかも目を疑うようなアクションをとっていた。(サービスのエンジニアリングとオプスの総責任者に、買収予定の会社の人間を勝手に当てようとして、全社連絡をしてしまったり)
- 膨大に膨らむSMSの支払い(月間数千万円規模)を放置しどんどん増えていっていた
- サービスダウンがかなりの頻度で発生し、しかも30時間も続くような事があったのに適切な対処ができていなかった
- 組織や業務フローがめちゃくちゃだった
- 会社へのコミットメントが薄く見えた(定時になったら帰って、ドレスメイクの教室やヨガに通ったりしていた)
- こういった問題を総合的に考えて重要な事からイシューを設定して物事を動かせていなかった。(サービスダウン対策のほうが重要なのに、大統領選挙の特設ページを作ることに心力を注いだり)
こういったCEOとしては力不足なままTwitterを運営することに不安を感じたVCが動き、ジャック・ドーシーをCEOからおろし、エヴァン・ウィリアムズをCEOにすることを決めたのです。
ただTwitterが上場する前に、エヴァン・ウィリアムズもCEOを降ろされてしまいます。2年前は見方だったVCが反旗を翻してエヴァン・ウィリアムズを解任したのです。
理由としては以下の様なことが書かれていました。
- 意思決定が遅い
- CEOとしての業務を疎かにしてTwitterのリニューアルなどプロダクト開発に多くの時間を割いてしまっていた
- 売上づくりの優先順位が低すぎた
- 友達ばかり採用しようとして、組織拡大が苦手だった
意外だったこと
あれだけ有名なエヴァン・ウィリアムズやジャック・ドーシーが、コミュニケーションや組織づくりなど、苦手なことがけっこうあったことに驚いた。
彼らも同じ人間。苦手なこともあるのだ。
また、BloggerをGoogleに売却したエヴァン・ウィリアムズでさえ「きちんとした」組織づくりはできてなくて、(もしかしたら意図的かもしれないが)かなり混沌としていた。
学んだこと
ツイッター創業物語を読んで学んだことをダラダラを書いていきます。自分でも活かせそうなエッセンスがいっぱいでした。
- 「買収させてくれないと、競合するサービスを作る」とみんな言う。だけどTwitterに対抗できるサービスを、Yahoo、Facebook、マイクロソフトも出せなかった。
- 共同創業は難しい。
- 容易にCEOを任せるべきではない。
- 影響力がある人が使えば一気に広がる。フォロワー数が資産になる。だから有名人は乗り換えないようになる。
- プロジェクト管理のうまさとかそういうのじゃなくて、情熱が大事。
- 他の起業家の本を読むと、なんとなく雰囲気感が分かって良い。色んなパターンが知れる。自分が意外とできていることとか。これで良いんだろ言うことが分かって自信をモテる。
- 他の会社の内部事情について、分からないことが多ければ多いほど、過大に評価してしまって、自分を過小評価してしまう。
- 外からすごいように見えても、実は会社の中身はぐちゃぐちゃというのは意外とある。
- 自分を安く売る事になる。なので、内部事情をしれたり、イメージが湧くようなことを本を通じて知れるのは有用。
- つまずくことは一緒なので、やっぱり疑似体験が重要。
- 採用ペース、成長ペースを疑似体験することによって自分の目線もあがる。
- CEOコーチを受けたい
- 誰かが辞めた場合、取材に応じてはいけないとか、ネット上で表明してはいけない、とそういうのを書かないといけない。ジャック・ドーシーがやってしまっていたように。
- 返り咲きを防ぐように、外堀からせめて、役員、投資家メンバーを仲間にしておかないといけない。
- そのためには、ありのままを共有し、良いこと、悪いことも一緒に考える、相談相手となって貰うと良い。
- ジャック・ドーシーでさえ社内でスピーチをしていた。自分もやらなきゃ。勉強とか研修を受けたい。
- コミュニケーションの断絶は駄目(取締役会、投資家、マネジメントメンバー)
意思決定は早くしなきゃ駄目。即断じゃなくても良いけど、エヴァン・ウィリアムズほど遅いと、周りからの信頼もなくなる。 - やめさせる時は、なるべく役職はなしでやめさせたほうが良い。在職しても半年とかその程度にする。
- ちょっとした囁きが、大きな動きになる。特に、何か小さな火種がある場合、ジャックがエヴァン・ウィリアムズに対してしたように。エンジニアリング担当バイスプレジデントがジャックに相談した。その時に懸念を取締役メンバーに伝えるように言った。
- Twitterの経営メンバーでも、こんなに出来ないこと、苦手なことがある。だからこそ完璧じゃない自分を悲観してチャレンジしない人生にしはしない。同じ人間なんだから。
- 取締役の過半数を抑えるのは重要。株式も。
- 大きなうねりを作りたい。
- 組織、人間関係での衝突をさけて臭いものに蓋をしたままにしておくと、必ず、どんどん大きな問題になっていく。組織・人間関係の問題は、できるだけ早く、適切にしておくべき。指揮命令系統と信任を誰が持っているのか?が重要。
- 人間関係は語り合いで解決できる。だから、話しにくい人とも必要であれば、できるだけ早く離さないといけない。
- 人間関係の鉄則は、「出来るだけ早く」「こちらから」手を打つことだ。
- 陰口を叩かないようにする、という文化を作らなければ。陰口からどんどんマイナスの思考が電波していく。
- このサービスを何をするもの?の定義を、早めにすりあわせなければいけない。あとでコロコロ軌道修正しても良いから。(Twitterの場合は、自分のステータスをアップデートするものなのか?周りで起きていることを共有するものなのか?それとも両方なのか?というのが、最後の最後までジャック・ドーシーとエヴァン・ウィリアムズの間でも擦り合ってなかった。)
- エヴァン・ウィリアムズでさえ、Bloggerの起業前に失敗している。その時の主な失敗原因は「フォーカスできなかった」こと。いろいろ思いついてしまうがために、毎週新しいプロジェクトを始めた。メンバーもついてくるのが大変だし、コストばかりかかって何も上手くいかなかった。
- 創業初期からいるメンバーをうまくマネジメントするために「自尊心コントロール」が必要になる。(役割、褒め方、貢献具合などを、肩書や各所でコメントしてあげる、等)